俺が面倒を見る、と言った日。|連れ子再婚する覚悟|

RIKUの記録

俺が面倒を見る、と言った日。

電話越しの沈黙が、やけに長く感じた夜だった。

四十分の道

彼女の住む市営住宅は、古い団地だった。

冬はすきま風が入ると言っていた。

役所の人に呼ばれ、机越しに言われたらしい。

「働いてください」

「保育園に預けてください」

一番近い保育園まで、歩いて四十分。

小さな体を抱えて、荷物を持って、坂道を。

雨の日も、風の日も。

彼女は免許を持っていない。

その町では、車がなければ何も始まらない。

そして、もう一つ。

あいつが、いつ来るか分からない。

チャイムが鳴るたび、少しだけ身構えると言っていた。

俺は、その話を電話で聞いていた。

こっちに来い

その夜、彼女は珍しく言葉を選んでいた。

「どうしよう」

それだけだった。

強い人だ。

弱音はあまり吐かない。

でも、困り果てているのは分かった。

俺は、深く考えずに言った。

こっちに来い。

俺が面倒を見る。

送り迎えもする。

手足にもなれる。

保育園だって、俺が連れていく。

あいつが来る心配もしなくていい。

こっちなら、俺がいる。

信じるということ

住み慣れた地元を離れるのは、簡単じゃない。

友達もいる。

生活の流れもある。

役所も、団地も、道も、全部慣れている。

それでも彼女は言った。

「わかった」

少しだけ震えた声だった。

俺を信じて、新幹線に乗ると決めた。

俺はフリーターだった。

貯金も多くない。

計算も、正直していなかった。

なんとかなると思っていた。

俺が働けばいい。

どうにかなる。

そう思っていた。

でも、その現実がどれだけ重いかを、俺はまだ知らなかった。

RIKUの記録

連れ子と再婚し、父親になるまでの記録。

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