新幹線に乗った日。
電話を切ったあと、部屋はやけに静かだった。
動き出した現実
「行くね」
彼女からそう連絡が来たのは、数日後だった。
思ったより、早かった。
団地を出る準備。
役所の手続き。
荷物の整理。
小さな子どもを連れての引っ越し。
簡単なことじゃない。
それでも彼女は、新幹線の切符を取った。
俺を信じて。
改札の向こう
その日、俺は駅に向かった。
ホームには人が多かった。
出張のサラリーマン。
旅行の家族。
みんな、それぞれの理由で新幹線に乗る。
俺にとっては、少し違った。
人生が動く日だった。
改札の向こうから、二人が歩いてきた。
小さなリュック。
大きな荷物。
そして、少し不安そうな顔。
俺は手を振った。
息子が気づいて、走ってきた。
始まった生活
それが、始まりだった。
三人の生活。
まだ家族とは言えない関係。
でも、同じ家に帰る。
同じご飯を食べる。
同じ朝を迎える。
そういう生活が、始まった。
俺は思っていた。
これで、きっと大丈夫だと。
働けばいい。
頑張ればいい。
どうにかなる。
でも、その生活は思ったより金がかかった。
俺の給料じゃ、足りなかった。


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