あの日、俺は息子に出会った。
息子は、生まれるものだと思っていた。
でも、俺は違った。
あの日、俺は息子に、出会った。
6時間の移動
新幹線に乗った。
電車を乗り継いだ。
片道6時間。
長いはずなのに、不思議と短く感じた。
やっと会える。
その気持ちのほうが、ずっと強かった。
スマホを何度も確認していた。
特別な日に向かっている感覚だった。
60分の不安
到着した。
駅前、ロータリーで立ち止まる。
人の流れを、何度も見送った。
彼女は来ない。
30分。
45分。
60分。
「来ないかもしれない」
その言葉が、頭をよぎった。
帰りの新幹線を調べようか、とまで思った。
そのとき、一台の車が止まった。
彼女が慌てて降りてきた。
「ごめん!遅くなった!」
彼女は車を運転できない。
友達に送ってもらってきた。
一人では来られない。
それでも、来た。
その事実だけで、十分だった。
ドアが開いた瞬間
車のサイドドアが、ゆっくり開く。
その子は、外の景色を見ていた。
まだ俺に気づいていない。
目が合った。
一瞬、時間が止まった。
そして――
「パァパァ!」

キャハッと笑いながら、両手をバタバタさせた。
電話越しの顔を、ちゃんと覚えていた。
嬉しかった。
胸が熱くなった。
守りたいと思った。
あの日、会いに行ったことが正しかったのか。
今でも分からない。
でも、あの時の俺は迷っていなかった。
俺は、前に進むと決めていた。


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